朝井リョウ『世にも奇妙な君物語』感想文|現代社会の皮肉と共感が刺さる5編の短編集

心が動いた本

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「世にも奇妙な物語」風の世界観を小説で味わえる、朝井リョウの短編集『世にも奇妙な君物語』。現代社会の歪みや人間の本質を、ユーモアと皮肉を交えて描いた5編は、どれも“奇妙”でありながら妙にリアル。中でも「リア充裁判」は、SNS時代の生きづらさを鋭く突いた傑作です。

書籍の基本情報

  • 著者:朝井リョウ
  • 出版社:講談社文庫
  • 出版年:2018年
  • ページ数:325ページ
  • 映像化:ドラマ化(2021年)

こんな人におすすめ

  • SNSや“リア充”文化に違和感を抱いている人
  • ブラックユーモアの効いた短編が好きな人
  • 朝井リョウ作品に初めて触れる人

あらすじ(ネタバレなし)

複数の伏線と意外な真相が面白い5編の短編集。その中の1篇「リア充裁判」をご紹介!

舞台は、コミュニケーション能力が法律で評価される世界。主人公・知子は、過去に「リア充裁判」で人格を変えられた姉を持ち、自身も裁判への出廷通知を受ける。SNSの投稿や交友関係が“証拠”となるこの裁判で、知子は自分の孤独と向き合うことになる。果たして彼女の“コミュ力”は認められるのか?そしてこの裁判の本質とは…。

「世にも奇妙な君物語」が読みやすい理由

  • 1話完結の短編集でテンポよく読める
  • 現代社会のテーマが身近で共感しやすい
  • 朝井リョウ特有の軽快な文体と語り口

感想

朝井リョウが描く“奇妙”は、ただの不思議では終わらない。 本作『世にも奇妙な君物語』は、現代社会の空気感を巧みに切り取った5つの短編で構成されており、それぞれが異なるテーマとテイストを持ちながらも、共通して「人間の弱さ」や「社会の歪み」に鋭く切り込んでいます。

皮肉がすごすぎて、朝井リョウに会えたら、こういうの書いて大丈夫なの?って聞きたいくらいでした。

どの話も、読み始めは軽妙でテンポがよく、すっと物語に入り込めるのですが、終盤にかけてじわじわと不穏さが増し、最後には「そう来たか…」と唸らされる展開が待っています。 特に印象的なのは、登場人物たちが皆どこか“普通”であること。だからこそ、彼らが巻き込まれる奇妙な出来事が、読者自身の生活にも起こり得るようなリアリティを持って迫ってくるのです。

「シェアハウさない」では人間関係の距離感、「立て!金次郎」では教育現場の理不尽、「13.5文字しか集中して読めな」では情報社会の浅さ、「脇役バトルロワイヤル」では承認欲求と競争の構造が描かれ、それぞれが現代の“あるある”を奇妙にデフォルメしています。

読後には、笑えるのにゾッとする、軽いのに重い、そんな不思議な感情が残ります。 朝井リョウの観察眼と語りの巧さが光る、まさに“世にも奇妙”な短編集でした。

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まとめ

『世にも奇妙な君物語』は、ただのエンタメでは終わらない。現代の価値観を揺さぶる“奇妙”な物語が、あなたの心に問いを投げかけてきます。短編だからこそ、気軽に読めて深く刺さる。朝井リョウの世界に浸りたい方は、ぜひ手に取ってみてください。

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