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救急医療の最前線には、命を救うだけでは語り尽くせない現実がある。
『救命センター「カルテの真実」』は、東京下町の救命救急センターに勤務する現役医師・浜辺祐一が、日々の診療を通して見えてきた医療の矛盾や人間のドラマを綴ったエッセイ集。
軽快な語り口ながら、読後には深い余韻が残る“命と向き合う”一冊です。
書籍の基本情報

- 著者:浜辺祐一
- 出版社:集英社文庫
- 出版年:2018年
- ページ数:272ページ
- 映像化:なし
こんな人におすすめ

- 医療現場のリアルな声を知りたい人
- 社会問題や高齢化に関心がある人
- 感情に訴えるノンフィクションが好きな人
あらすじ(ネタバレなし)

救命救急センターには、日々さまざまな患者が搬送されてくる。
誤嚥による心停止、高齢者の延命、虐待、自殺未遂、孤独死…。
著者は、目の前の命を救うことに全力を尽くしながらも、「この救命は本当に幸せをもたらしたのか」と自問する。
医療の限界と社会の矛盾に直面しながら、医師として、人間として、何を選び、何を守るべきかを問いかけるエピソードが綴られています。
死=悲しいことや避けること、救命=美しいこと、とされているけれども、たくさん死を経験する場所だからこそ、一人ひとりの人生を考えて、良かったのかと考えていることやその会話がノンフィクションだからリアルで、ドラマとは違うのが胸に迫ってきます。
医療ドラマにはドラマティックな展開があり、感動を誘うようにできていて、それはそれで大切だと思うけれども、こういうリアルな現場を描くエッセイにも目的があり、淡々と描かれているため気持ちが高ぶって感動するという感じではないが、より深く考えさせられる良著だと思いました。
「救命センター「カルテの真実」」が読みやすい理由

- 1話完結のエッセイ形式で、気軽に読み進められる
- 専門用語も丁寧に解説されており、医療知識がなくても理解しやすい
- 著者の語り口が親しみやすく、感情に寄り添ってくれる
読む前に知っておきたい魅力と注意点

魅力
- 医師本人によるリアルな現場描写
- 東京下町の救命救急センターで働く著者が、実際の診療体験をもとに命の現場を描いており、医療ドラマでは味わえない“現実”が詰まっています
- 社会問題への鋭いまなざし
- 高齢化、虐待、孤独死、自殺未遂など、医療の枠を超えて社会の矛盾や限界に切り込む内容が深く考えさせられます
- 1話完結のエッセイ形式で読みやすい
- 専門用語も丁寧に解説されており、医療知識がなくても理解しやすく、著者の語り口も親しみやすいです
注意点
- 感動より“問い”が残る読後感
- ドラマチックな展開ではなく、淡々とした語り口で医療の葛藤を描いているため、感情の高ぶりよりも静かな余韻が残ります
- 死や延命の現実に向き合う重さ
- 救えなかった命や延命の意味など、読者自身の価値観を揺さぶるテーマが多く、読むタイミングには少し注意が必要です
- 医療制度や倫理への問題提起が多い
- 医療費やベッドの使い方など、制度的な課題にも触れており、軽い読み物として手に取ると重く感じる可能性があります
感想

『救命センター「カルテの真実」』は、命を救うことの意味を改めて考えさせられる一冊でした。 著者が語る救命の現場は、決して美談ばかりではありません。 延命の先にある苦しみ、救えなかった命への後悔、そして医療制度の限界。 それでも、著者は目の前の命に向き合い続けます。 軽快な文体の中に、医師としての葛藤と人間としての優しさが滲み出ていて、読者の心に静かに響く。 医療をテーマにした作品の中でも、ここまで“現実”を描いたものは貴重だと感じました。
”なんかもう一冊いけそう”なあなたへ
- 「法医学教室との別れ」西丸與一
こちらも真実を描いたエッセイ集。救命センターは命を救う場、法医学は死後に分析する場と違うように思えるかもしれませんが、現実を描いており、一人ひとりの目の前の人生に向き合い続けるのは一緒。
優しい語り口で読者の心に静かに響きます。
二時間ドラマの常連であった「法医学教室シリーズ」の原作です。
→「法医学教室との別れ」感想記事はこちら👇

まとめ
『救命センター「カルテの真実」』は、医療の現場に立つ人だけでなく、すべての“命と向き合う人”に読んでほしい一冊です。
救命とは何か、延命とは何か――その問いに、あなた自身の答えを見つけてみてください。
社会の縮図としての救急医療を、ぜひこの本で体感してみてください。
ルミエールのつぶやき
救命センターって、人の命を救うことが使命の場所で、神様みたいなスキルを持つ医師、看護師、医療関係者の集まりの場所っていうイメージ。
でも、その人たちも業務だけをしているわけではなくて、雑談したり、ごはん食べたりしているっていうことがわかって、同じ人間なんだって、ホッとした。
生死をさまよっている人を目にする機会って、普通は人生の中でそうそうあるものじゃないと思う。
でも、それが日常ってどんな精神状態でいたら良いのだろうな。
尊敬しかない。
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